クロマグロはマグロの中でも最大の種類で、大きいものでは全長3m・体重500kgまで成長します。また、最も味がよく、高値で取引されているため、近年は乱獲により個体数の減少がみられます。
その対策として世界的に漁獲量の削減措置などがとられています。
現在、世界各国では養殖クロマグロも大量に流通してきていますが、それは天然の稚魚を捕獲してきて育てる「蓄養」というもので、稚魚の乱獲が進めばやがて養殖クロマグロも減少していくと推測されます。
厳しい環境下でクロマグロの供給を維持していくには、近畿大学が世界で初めて成功した「完全養殖」の技術を確立することが求められています。
完全養殖とは、人工ふ化した仔魚を親魚まで育て、その親魚から採卵し、人工ふ化させて次の世代を生み出していく技術です。
この技術により天然資源に頼らず、全てのプロセスを人の手で育てることが可能になります。
魚それぞれの成育に合わせ、原料や添加物の安全が保証された飼料会社の養魚用餌料、漁獲履歴の明確な餌料用冷凍魚を与えています。
海上生簀での飼育期間中は、台風等の災害や猛暑による高水温、冬の低水温などの自然現象におびやかされます。
このような場面でしばしば魚は病気にかかり易くなるため、できるだけ病気を引き起こさないよう一台の生簀網で飼育する魚の数を少なくし、ストレスを小さくして育てています。
また自然の海域で飼育しているため魚に寄生虫が付く場合がありますが、その時は駆除のために魚を消毒します。これには人間の傷口の消毒に用いられるオキシドールと同じ成分のものを使用しており、魚に残留するものではありません。
優れた形質をもつ子を選んで育て、その中からさらに優れたものを選ぶことを繰り返して優良品種を作り出す選抜育種という方法で、天然魚より優れた形質をもつ魚を誕生させています。
また、すぐれた形質をもつ近縁な2魚種を交配して、両親のそれぞれの優良な形質を併せもつ魚の生産(交雑)も研究対象となっています。
近畿大学水産研究所は、永年にわたる養殖法の研究により、「獲る漁業からつくり育てる漁業」への転換を実現し、水産資源増産と持続的利用を実現する「青の革命(ブルーレボリューション)」に向け、これからも研究を続けていきます。