戦後、全国の漁港での漁獲高は大幅に落ち込んでいました。
遠洋漁業しかなかった時代、近畿大学初代総長世耕弘一は「海を耕す」という理念のもと、栽培漁業を提唱。
1948年、和歌山県白浜町の協力を得ることで、
臨海研究所(現白浜実験場)が誕生しました。
養殖研究の成功を裏付ける要因のひとつとなったのが、「網生簀(小割)式養殖」の開発です。それまでは湾を仕切った養殖池で魚を放し飼いすることが行われてきましたが、網生簀を用い、効率的に飼うことに着目。
その革新的な「網生簀(小割)式養殖」により、水産養殖は大きな進歩を果たし、
現在では、世界の養殖技術の世界基準となっています。
※写真は近年の網生簀です
世界で初めてヒラメの人工ふ化、種苗生産に成功しました。
これを皮切りに、18種類の魚種の人工ふ化、種苗生産に成功しました。
水産庁から委託を受け、マグロ類の養殖研究を開始しました。
ここからクロマグロの完全養殖に成功するまで30年以上の長い道のりとなりました。
異なる魚の形質を受け継ぐ交雑魚の研究を行い、「イシダイとイシガキダイの雑種の養殖法」で特許認可を取得しました。
この交雑魚第1号は「キンダイ」と名付けられました。
他にマダイやブリ、クエを使った交雑魚を作り出すことにも成功しています。
研究を始めて9年後の1979年、世界で初めてクロマグロが生簀内で産卵しました。このとき採取した160万個ほどの卵をふ化させ、最長47日間の飼育に成功しました。ところが、1983年から産卵しない年が11年も続き、研究が中断しました。
和歌山県では冬場の鍋料理としてクエが珍重されていますが、漁獲量が少ない為”幻の魚”といわれています。
ふ化仔魚の口が小さいため小型の生物餌料の確保が困難で、安定的に生産できるまで期間がかかりました。
また冬の低水温期の成長が遅いため、稚魚を温暖な奄美の漁場で育成して養殖期間の短縮を図っています。
世界で初めて人工ふ化クロマグロの稚魚87尾を放流することに成功しました。地球規模での乱獲による、天然クロマグロ資源の減少が懸念される中、近畿大学が取り組む養殖用種苗の量産化に注目が集まっています。
1970年に着手したクロマグロの養殖研究は、デリケートな魚故、生態もよく知られていなかったことから、32年の年月を要しましたが、
2002年世界で初めて完全養殖に成功しました。
2002年に完全養殖に成功したクロマグロを2年間飼育し、2004年に初出荷いたしました。
その後も学問領域を越えた連携を行うことで、新たな養殖技術開発に挑み続けています。